例のRX570について

1. 例のRX570とは

パソコン工房 秋葉原アウトレット店で8/7~8/10頃に売り出されていた,マイニングBIOS仕様でジャンク扱いのRadeon RX570のこと.価格が2,138円(税込)と非常に安かったため話題となった.

2. 店員からの情報

店員曰く「(店の検証では)Intelチップセットを搭載した環境では起動しませんでした.AMD環境では起動はするけど3D機能はつかえませんでした」

3. 実際の動作

ドライバが当たっていない状況(BIOS画面やドライバインストール前のWindowsなど)では普通に動作する. Windowsではパッチを当てれば動作する.Linuxでは普通に動作する.

クロックについては,通常のRX570はCore 1168MHz, Memory 1750MHzである[Wikipedia] のに対し,Core 1100MHz, Memory 2010MHzで動作する.マイニング向けにクロックが調整してあると思われる.

3.1. Windowsでの動作

ドライバのインストールはできるが,デバイスマネージャでエラーが表示され,互換モードでの動作となる. これはマイニング向けBIOSが書き込まれたRX570として正常な動作であるらしい. RX570として使用するためには,ドライバによるBIOSの認証を回避するためにドライバにパッチを当てる必要がある. ドライバへのパッチ当てを簡単に行うためのツールとして「AMD/ATI Pixel Clock Patcher」というものがあるので,これを使えば良い.

手順としては,以下の通りとなる.

  1. RX570を取り付け,PCを起動する
  2. Windows上でRX570のドライバをインストールする
  3. バイスマネージャでRX570がエラーを起こしており使用できないことを確認する
  4. AMD/ATI Pixel Clock Patcherを起動し,ドライバにパッチを当てる
  5. Windowsを再起動する
  6. バイスマネージャでRX570が正常に認識されていることを確認する

なお,AMD/ATI Pixel Clock Patcherではドライバに対してパッチを当ており,RX570のBIOS ROMを書き換えているわけではない.そのため,このRX570を別のPCに移した場合にはそのPCでもドライバにパッチを当てる必要がある.

3.2. Linuxでの動作

Ubuntu 18.04.3 LTS, 19.04において,amdgpuドライバで画面が出力されることを確認した.詳しい動作については確認していないが,問題はないと思う.

4. このグラボの噂

4.1. 動作しない

RX570を購入したと見られるTwitterユーザ(私を含め)37人のツイートを確認したところ,動作しないとの報告は1件だった.詳細は不明である.
なお,37件のうち動作したという報告は25件,動作しなかったという報告が1件,購入は報告されているが動作について報告していないものは11件であった.

4.2. 300MHz病

Twitter上にて,クロックが300MHzまでしか上がらないという報告が2件あった. これについては,他機種向けのBIOSを書き込んだ場合にクロックが300MHzから上がらない場合があるようである. いずれの報告でも元のBIOSに戻してパッチを当てたら定格動作したとのことである.

4.3. Intel機での動作

店員曰くIntel機では起動しないとのことだが,Twitter上ではIntel機で動作したとの報告だった. 私も(古いものだが)Intel X58 chipset環境で動作することを確認した.

4.4 クーラー

クーラーがNVIDIAGPU(具体的には,GTX760, GTX960など)のリファレンスカードのクーラーに酷似しているという話がある. 画像検索をして確認してみると,NVIDIAのロゴが無いこと以外は同じように見える.また,RX570にはマルチGPU時のブリッジ用コネクタが無いにも関わらず,ちょうどSLIコネクタの切り欠きがケースにある点も同一である.

なお,画像検索をすれば分かるが,シロッコファンを搭載した外排気仕様のクーラーである.

5. 所見

  • ブラケットが僅かに錆びていた.
  • 分解したところ,ヒートシンクには僅かに埃が付着しているが,ほぼ使用されていないと言っていいレベルだと思う.
  • ショート基板仕様であり,ファンを取り外すと全長が175mm程度(突起含まず)になる.
    • パッシブクーラー仕様としてラックマウントサーバでも使用できるのではないかと思う.
    • クーラーを含めた全長は243mmである.
  • ケースのラベル "PN:251-30924-2400F", "DATE:1805 Rev:A0"
    • ケースは2018年第5週に製造されているらしい
  • 基板裏面のラベル "E382", "Radeon RX 570 8GB GDDR5", "PN 299-3E382-000PC", "A181200008646", "R-REM-PCV-3E382", "PC PARTNER LIMITED"
    • PC PARTNER LIMITEDの子会社にZOTACがあるが,ZOTACRadeonシリーズのGPUを出していない.
  • リファレンス基板と思われる画像と見比べると,いくつか異なる点がある
    • DVI端子のパターンが無い
    • ファンコネクタの位置が異なる (リファレンスはPCIe端子側,このRX570は補助電源コネクタの横)
  • arkで1万円で販売しているRX570と同じもの?
    • arkの方も3000円になったらしい

6. VBIOS (追記)

パッチ無しで正常動作したVBIOS.
なお,VBIOSを書き込む際には必ず初期VBIOSのバックアップを取り,自己責任で実施してください.